NEON

005

005 Key Visual

Se.

翌日は、よく晴れた日だった。

父さんの車で、サンディエゴ国際空港まで送ってもらった。

アレクシスもきっとジェフ・ナッシュに送ってもらってるはず。

父さんには「スティーブ・ヴァイじゃなくてジェフ・ナッシュだからね!」と念押ししておいた。

空港にはもうアレクシスが来ていて、搭乗時刻を待っていた。

「アレクシス!」

アレクシスの横にはジェフ・ナッシュとアレクシスの叔母さんのベスがいた。

「こんにちはジェフ、ベス。これ、うちの父さん」

大人たちが「いつもお世話になってます」みたいな話をしはじめた。

「本当に来たんだね」

アレクシスが少し驚いてる。

「当たり前じゃん。行くって言ったら行くよ」

それに、まだ大事なことを言ってない。

「これやるよ」

持ってきた紙袋を渡す。

昨日、母さんが綺麗に包んでくれた。

「何?開けていい?」

「うん」

アレクシスがその場で包みを開け始める。

「ドライヴ・ライク・ジフのTシャツ!」

そう。

アレクシスが欲しがってたバンドT。

「僕が着てたやつだけど、きれいに洗濯してもらったから」

アレクシスは僕に一歩近づいて、ギュッと抱きしめてきた。

ちょっとびっくりして、固まっちゃったけど、アレクシスの背中をポンポンとたたく。

「ありがとう」

そう言ってアレクシスは、タンクトップの上からTシャツをかぶる。

「大事に着るね」

アレクシスの嬉しそうな笑顔を見て安心した。

大人たちはまだ何か話してる。

あっちの波がどうだとか、こっちの波がこうだとか……。

「また来年も来るよね」

「うん」

「僕んち、毎年どこか旅行に行くんだよね。もしよかったら、一緒に行かない?」

「来年の話を今する?」

アレクシスが笑いだす。

「誘ってくれてありがとう。そこは大人どうしで話してもらおう」

アレクシスは少し小声で、横で話が盛り上がってる大人たちを見て言う。

「アレクシスが行かないなら、僕もここに残るから」

「一人で残るの?大丈夫?」

本気とも冗談とも言えない会話をしていると、搭乗時刻となった。

「……行かなきゃね」

一緒に搭乗ゲートまで向かう。

アレクシスはジェフやベスとハグをして別れを告げる。

「また来年ね」

「元気でな」

なぜか父さんとも。

「セスと仲良くしてくれてありがとう」

「こちらこそ。食事までごちそうになってありがとう」

「また来年も待ってるよ」

そして、アレクシスが僕の前に立つ。

僕は涙を我慢してるのに、アレクシスは笑顔だ。

アレクシスはまた僕を抱きしめる。

「また来年ね」

「うん」

まだ、言いたかったことを言えてない。

「……アレクシス……ありがとう」

涙を我慢して、ちょっと声が裏返った。

アレクシスは笑顔で手を振りながら搭乗口へと向かった。

「また来年ね!」

アレクシスが見えなくなるまで手を振り続け、飛行機が飛び立つまで見送った。

「それじゃあセス、また来年もよろしくね」

ベスがそう言ってくれる。

「こちらこそ」

「またな。たまにガレージに遊びに来いよ」

ジェフが「また」って言葉を言ってくれる。

それだけじゃない。

ガレージに誘ってくれた。

ジェフは僕の頭をくしゃくしゃと撫でると、「じゃあな」と片手をあげて帰って行った。

帰りの車の中で、なんか涙出てきた。

結局言えなかった。

君がいて楽しかった。

君に会えてよかった。

一年なんて長すぎる。

たったこれだけの言葉なのに。

でも僕は待つよ。

来年、君が戻ってくる日まで。

Today’s Music

Wait — M83

Story Date

August 1993

Location

San Diego

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