NEON

004

004 Key Visual

Se.

アレクシスは僕の話を聞いてくれる。蔑まない。

僕が好きだと思うものを、ちゃんと理解しようとしてくれる。

一緒にスケートパークで話したり、サーフボードを抱えてビーチへ出かけたり。

父さん以外の人と遊んだ夏だった。

僕はアレクシスの家のガレージで過ごすのが好きだった。

最初はすごい楽器や機材ばかり見てた。

でも今は、アレクシスと演奏するほうが楽しい。

マネをするより、誰かと合わせることの楽しさを知った。

夏が終わると、アレクシスはいなくなる。

もうすぐ、夏が終わる。

「ロンドンってどんなところ?」

うちのプールサイドに座って、二人でカップのアイスを食べる。

「こことは全然違うところ。天気も、空の色も、空気も違う」

「どう違うの?」

「……真逆かな」

「アレクシスはロンドン好き?」

「ロンドンは……好きでも嫌いでもない。でも、戻りたくはないかな」

戻りたくない……。

「向こうの学校はどんな感じ?」

「……制服。あとね、演劇の授業がある」

「えー、さすがイギリス!なんか厳しそう……」

「厳しいかどうかはわかんないけど……けっこう荒れてるよ」

「……学校好き?」

アレクシスはプールに足をチャプチャプさせながら考えてる。

「……セスは学校好き?」

「……好きじゃない。一人だし。勉強おもしろくないし」

「……私も一緒」

そういえば、出会ったときにも言ってたな、「ロンドンでも友達いない」って。

「セス!」

母さんが帰って来た。

「プールにいるよ!」

しばらくして母さんがプールにやってくる。

「あら、アレクシス、来てたの」

「こんにちはウィクスラーさん」

「その『ウィクスラーさん』はやめてよ。セリーナでいいわよ」

「ありがとう、セリーナさん」

「アレクシスも夕飯食べて行かない?」

きっと母さんは何か僕に用があったはずなのに、すっかり忘れてしまってる。

「いいの?」

「毎回聞かなくていいよ」

「二人とも手伝ってくれる?」

手伝うって言っても、買ってきたものを温めるだけだと思うけど。

僕とアレクシスはキッチンへ向かう。

そのうち父さんも帰って来た。

キッチンカウンターで冷凍のピザを4人で囲む。

父さんも母さんもいつも立ったまま、ワインを片手につまむ。

「アレクシスのお父さんはスティーブ・ヴァイなんだってね、セスに聞いたよ!」

スティーブ・ヴァイ?

「違うよ父さん!ジェフ・ナッシュだよ!スティーブ・ヴァイに似てるって言ったの!」

「あぁ、そうか、ごめんよアレクシス。どうも音楽に疎くて」

父さんとは音楽の話が苦手だ。

僕との会話でも、なんかおかしいな、と思ったら違う人のことを話してることが多い。

必死に話題を合わせてくれようとしてるんだろうけど。

食事を終えて、この前4人で観に行った『ジュラシック・パーク』の話をして過ごした。

「そろそろ帰るね」

「うん」

明日、アレクシスはロンドンへ帰る。

「空港まで見送りに行くよ。ちょうど父さんも休みだし」

「いいよ。空港遠いし」

「いや、行く」

「そう?じゃ、待ってるよ」

アレクシスはそう言って笑ってくれる。

スケートボードをかかえて、丘を登って帰っていった。

少し日も落ち始めた。

僕の夏も、終わろうとしている。

Today’s Music

Title and Registration — Death Cab for Cutie

Story Date

August 1993

Location

San Diego

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