003

Se.
数日後、アレクシスを誘って朝からサーフィンへ行くことになった。
僕の父さんも一緒だ。
今年まだ何度目かのサーフィンだというアレクシスは、肌が白い。
海に行かない母さんでもここまで白くない。
その割には、乗れたらちゃんとバランスは取れる。
「腕と肩がきつい……」
毎日のようにサーフィンに行く僕にとっては何でもないことだけど、パドリングが辛いらしい。
2時間ほど海で遊んで、アレクシスと歩いて家まで戻る。
「いらっしゃい、アレクシスね」
「こんにちは。すっごくいい家」
アレクシスは家じゅうのいろんなものに興味をしめした。
あの柱がでかいとか、階段の手すりの細工が繊細とか。
そんなこと考えたこともなかった。
ダイニングで4人で朝食をとるときも、皿が素敵とか、キッチンがおしゃれとか。
キッチンからの景色が一番のお気に入りだった。
これには母さんも大喜びだった。
「こんなに海が近いと、嵐の時こわくない?」
「慣れちゃったわ」
母さんは肩をすくめてそう言う。
「嵐の海もけっこう綺麗なんだよ」
仕事に行く準備をしながら父さんがそう言う。
「そうなんだ。……見てみたいな」
アレクシスって、今日初めて父さんと母さんに出会ったって感じがしない。
もう前から知ってた人みたいな話し方をする。
正直ちょっと心配してた。
うちの両親は他の家の親とは違うんじゃないかって思ってた。
父さんは大学教授で、母さんは精神科医。
よその家の子にはちょっと気難しく思われるんじゃないかって。
でも、アレクシスは全然気にしてなかった。
朝食を終えて、父さんと母さんが仕事に出かけると、僕の部屋で過ごした。
元々2階に自分の部屋があったけど、ドラムの音が下に響くからって1階の端のゲストルームを使ってる。
目の前にはプールがあって、直接外に出られる。
僕の部屋に友達がやってくるのは初めてだ。
「何これ、すごーい」
部屋に入るなり、アレクシスは僕の部屋の本棚に興味をしめした。
「これ何の本?何冊あるの?図書館?」
「ほとんどコミックだよ。あとは映画とか音楽の本。何冊あるかはわかんない」
「本棚の1段で50冊くらいあるよ。それが……」
アレクシスが棚の数を数えてる。
これだけあると冊数まではもう数えたくないな。
「500冊はあるんじゃない?」
「あっちにはCDとVHSもあるよ。なんか視る?なんか聴く?」
アレクシスがCDの棚の前から動かなくなった。
僕はアレクシスの家のガレージが好きだ。
同じように、アレクシスは僕の部屋のCDの棚が好きみたいだ。
アレクシスが何かに興味を持つと、僕が説明してあげる。
アレクシスは、それを煙たがることもなく、ちゃんと聞いてくれる。
僕のコミックを借りて帰って、ちゃんと読んで、ちゃんと感想を言って返してくれる。
マーベルコミックと、DCではバットマンがお気に入りだった。
ただ僕の好きなものを、同じように好きになってくれた友達ができただけ。
一緒に好きなことを話したり、音楽をやったり、サーフィンやスケートに行ったり。
それだけのこと。
でも僕には、全部が初めてだった。