NEON

008

008 Key Visual

Co.

衝撃の出会いの翌日、イーライを誘ってまたガレージへ行った。

イーライは俺の幼馴染。

今日はBMXを置いて、イーライの車に乗せてもらう。

俺はベースを抱えて、イーライはいつものリュックを背負って。

アレックスの家に着くけど、今日はガレージが閉まっている。

車の音に気づいたのか、家の奥のほうからセスが出てくる。

ガレージのシャッターが開いて、アレックスも顔を出す。

「悪ぃ、遅くなった。これ、イーライね」

「どうも」

「僕、セス。あっちがアレクシス」

ガレージは広く、反対側にはプールが見える。

「で?何やる?」

ケースから久しぶりにベースを出す。

早くやりたくて仕方ない。

「何したいの?」

アレックスもギターをアンプに繋ぎながら聞いてくる。

「僕とアレクシスは『今日はあれやろう!』って始めることはあまりない。
アレクシスが音を出しはじめて、それに合わせて僕が叩く、そんなスタイル」

相変わらずセスはめんどくせーな。

「メタリカ好きなの?」

セスが俺のTシャツを指さして聞く。

「コーディはメタリカやりたくてバンドはじめたんだよ。
でも今のバンドじゃ1曲もメタリカやってないんだよね」

イーライが余計なことをしゃべる。

「音楽性の違いだよ」

ギターを置いたアレックスが俺の手を引いて、CDの棚へ向かう。

「メタリカのどのへん?」

「なんだこのCDの棚。レコードショップかよ……」

「Seek & Destroyとか?あんまりベタ過ぎるか。ベースならクリフ・バートン?」

セスの話は無視してメタリカのアルバムの中から1枚を選ぶ。

「これ」

俺とアレックスがCDを準備する間、セスとイーライが話すのが聞こえてくる。

「イーライは楽器やんないの?」

「僕は全然音楽はダメ」

イーライとは長い付き合いだけど、音楽をやろうとも思ったことないだろうな。

「イーライはなんでコーディと一緒にいるの?」

「……やっぱり変に見えるよね」

「いや、それなら僕とアレクシスが一緒にいるほうが変に見えるでしょ」

確かに。

「僕とコーディは小さい頃からの幼馴染なんだよ。家も近くて、親同士も仲良くて」

「あー、なるほどね」

曲をセットすると、JBLのフロア型スピーカーから音が出る。

「For Whom the Bell Tollsか」

セスがそう言う。

「お前らなら余裕だろ」

昨日のあれができるなら朝飯前だろ。

ベースを抱え、アレックスもギターを持つ。

1曲をリピート再生し、それぞれ音を出して合わせる。

もう俺はやり慣れてる。

その間イーライはビデオカメラを手にこっちを撮影する。

「そのビデオカメラは?」

セスがイーライと話してる。

「なんか、面白いもの撮りたいんだよね」

「面白いもの?」

「あー、撮ってる時よりも、後で見返して編集するほうがおもしろいって言ったほうが正しいかな」

「もしかして映像系に進学するの?」

「そうだよ。UCSDの視覚芸術学科」

「そうなの!?一緒じゃーん!」

世の中って狭いな。

偶然耳にした音で出会って、たまたま同じ年で、大学まで一緒だなんて。

まぁ、狭い地域だしな。

セスはしゃべってばかりでぜんぜん練習しない。

アレックスも、CDから流れる音に合わせるというのとはちょっと違う。

「ボーカル入る前まででよくない?歌いたいの?」

アレックスがそう聞いてくる。

「いや、歌いたいわけじゃない」

「じゃ、ボーカル入る前までね」

30分もすると、俺が出す音に合わせてセスが叩き、アレックスがまた音を乗せる。

そんな具合で形になってきたけど、アレックスもセスも原曲とは少し違う。

でもそれが何だか心地いい。

2回通しでやってみたけど、1回目と2回目の出来も違う。

こいつらはその時その時のフィーリングで音を出してるんだ。

一通り音を出して満足すると、一気に腹が減って来た。

「腹減った」

「どこか食べに行く?」

アレックスはもうギターを片付けはじめてる。

「イーライ退屈じゃない?」

「全然。海行かない?僕車出すよ」

「何か買っていく?」

俺が腹減ったって言ったのに、3人で話をすすめてガレージを出ようとしてる。

「おい、待てよ」

その後俺はバンドを抜けた。

Today’s Music

For Whom the Bell Tolls — Metallica

Story Date

July 1996

Location

San Diego

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