009

Co.
9月になって、イーライたちの学校が始まった。
それぞれ仕事や学校があったけど、毎日のように4人で集まった。
アレックスの家のガレージで音楽やったり、プールで遊んだり。
メタリカ以外にもやりたい音楽ができた。
コピーじゃなくてアレンジという楽しさも覚えた。
音楽以外でもサーフィンやったり、スケボーやったり。
川に飛び込んだり、海に潜ったり、いろんなことに挑戦した。
「何する?」
手すりのない橋に、4人並んで足を投げ出して座る。
川までは高さ2mくらい。
川というほどの広さも水量もない。
「こんなに水少ないとつまんないね」
そう言うイーライは、三脚まで持ってきて完全に撮影モード。
「サン・ルイス・レイあたりは?」
「何するの?」
俺が提案するとアレックスが聞いてくる。
「川」
「今度は水ある?」
「あるんじゃね?」
俺が立ち上がると、イーライが続き、アレックスとセスも立ち上がる。
イーライの車、シボレーキャバリエを俺が運転して、山へと向かう。
助手席のイーライはまだビデオカメラを回してる。
後部座席のセスは、すぐ音楽を変えようとする。
真ん中に陣取って、前に身を乗り出してガチャガチャやってる。
それを俺がボタンひとつでラジオに切り替える。
「あっ……」
セスはおとなしく後ろに下がっていく。
ラジオからは2Pacのカリフォルニア・ラブが流れ、俺はボリュームを上げる。
すぐに後ろから「In the city~♪」とアレックスの歌声が聞こえてくる。
セスも一緒に歌い始める。
助手席のイーライは、ゆっくりとビデオカメラを後ろに向ける。
そのうち4人の声が重なる。
「Now let me welcome Wild Wild West!」
こんな何でもないことで盛り上がる。
1時間近く走ったところで路肩に車を停める。
俺はTシャツを脱いでボードショーツ1枚になる。
「何するの?」
俺はアレックスに「まぁ見てろ」って顔をして、岩場へ向かう。
「アレックスはここ来たことないの?」
そう言いながらイーライも、セスもTシャツを脱ぐ。
「……それはもったいないな。おいでよ」
イーライが岩場へアレックスを連れてくる。
ビーサンを脱いで、俺は岩場の先へ向かう。
「わーーー、めっちゃ楽しそーーー!」
アレックスにもう一度「見てろよ」と目で合図して、川へ足から飛び込む。
高さは2mくらい。
一瞬で冷たい水中へと落ちる。
水面に顔を出すと、今飛び込んだ岩の先にはアレックスが立っている。
その横でイーライがカメラをまわす。
「冷たい?」
「気持ちいー!」
アレックスもTシャツを脱いで、水着姿になる。
アレックスは何でもすぐにやってみる。
躊躇うことなく川へと飛び込んだ。
続いて、カメラをその場に置いたイーライ、セスも飛び込む。
「けっこう冷たいな」
イーライは、さっき飛び込んだ岩まですぐ戻って行く。
「水が綺麗」
アレックスは海でいつもやってるみたいに、空を向いて浮かぶ。
「次あっちの岩な」
さっきよりずっと高い、5mくらいある岩を指さす。
下まで泳いで、登りやすい足場を選びながら上まで登る。
後ろからアレックスとセスもついてくる。
イーライはさっきの岩場に、三脚を持ち出してセッティングしている。
アレックスが最後の岩を登るのに苦労してるので、上から手を引いてやる。
「うわー!高っ!」
そう言ってアレックスが下をのぞく。
「これほんとに飛ぶ?」
セスも恐る恐る下をのぞく。
「これくらい行けんだろ」
そう言って、勢いをつけてジャンプする。
「YEAAHHH!!」
さっきよりも少しだけ滞空時間が長い。
ザバーン!と再び全身を冷たい水が包んだ。
水面から顔を出すと、やっぱり次はアレックスが控えてる。
さっきより緊張してる。
笑顔が固いな。
「アレックス!下見るな」
「あはは、下見るなだって。無理言うよね」
セスがそう言っている横で、アレックスがジャンプする。
「YAAAAAA!!」
甲高い声が響いて、ザバン!と着水する。
俺は怖気づいてるセスを見ながら拍手をしてみせる。
水面から出てきたアレックスは、声をあげて楽しそうに笑う。
いつの間にかセスの横にはイーライが立ってる。
「お先」
イーライはセスにそう言うと、助走をつけて飛び込む。
静かに膝を抱えて、綺麗に飛び込んだ。
「イーライすごーい!めっちゃ余裕じゃん!」
あとはセスだけ。
イーライはいつも、「いいよ、やる」と俺についてくるヤツ。
セスは最後までウジウジ考えるヤツ。
「セス!飛べ!」
アレックスがけしかける。
「カメラで撮ってんぞ!」
イーライのこの一言で決心がついたのか、セスはカメラの方向を一度見る。
「行くぞ!」
セスはそう言って、後ろに下がって一度視界から消える。
次の瞬間……
「OH SHIIIIT!!」
セスが岩からジャンプした。
助走が長かったせいか、俺らより少し先にバシャーンと着水した。
……
3人でセスが浮かんでくるのを待つ。
水中に姿が見えた。
「プハッ!」
セスが水面に顔を出すと、アレックスがその上に乗る。
「飛んだじゃん、セス~」
「こら!やめろ!」
セスがふざけて絡みつくアレックスを振り払おうとする。
「さ、もっと高いとこ行く?」
イーライが周りを見渡しながらそう言う。
「もうここでいいよ~」
セスはそう言いながらまだアレックスを振りほどこうとしている。
「もう一回行こーぜー」
もう一度4人で岩場を登ると、今度はイーライが飛び込み方を指示する。
「4人で一斉に飛び込もうよ」
「賛成!」
アレックスはだいたい何でも賛成する。
3人でセスの顔を見る。
「……いいよ」
それから飛び込むまで、セスの精神統一待ちに10分かかった。
「それじゃあ行くぞ!」
「せーのっ!」
4人で同時に飛び込む。
「WOOOOOO!!」
ザバーンッ!
水中でお互いの顔を確認し合う。
全員が、水の中で笑い出した。
水面に顔を出しても笑いは止まらない。
ただ4人で笑いあって、その日はそれでもう満足した。