NEON

018

018 Key Visual

Co.

もうすぐ夏も終わりそうな夕方。

仕事を終えて、いつものようにティエラサンタのBMXコース。

コースと言っても、自分たちでスコップで土を固めて作る自作コース。

ここは俺の職場で、スポンサーでもある「SDX」のチームで使ってる。

大会も近いので、最近は暗くなるまでここにいる。

みんなでスコップ持って、飛んで、壊して、また直す。

ここ2週間は朝から晩までSDXのやつらと一緒にいる。

海にも行ってないし、あいつらとも会ってない。

BMXは好きだ。

俺にはこれしかないと思ってた。

でも、この2週間はBMX漬けだというのに、なんか、つまんねー。

スカイダイビングに行って、アドレナリンを感じまくった。

BMXじゃ物足りなくなったのか。

そんなんじゃねーんだよな。

走ってるとき、飛んでるとき、作ってるときもそれなりに楽しい。

「もう暗くなってきたから終わろう」

誰かがそう告げる。

スコップとBMXを車の後ろに積んで、帰る準備をする。

「コーディも来ない?」

仲間のオジーが声をかけてきた。

オジーは俺と同い年、俺より少し後にBMXをはじめた。

「何?」

「9月の最初のSOMA。Blink出るんだって」

「あぁ……俺いいや」

「あ、そうか、コーディはメタリカか」

「たまにはパンクも聴いてみろよ」

聴かないわけじゃない。

Rustlineで散々聴いてきたし、やってきた。

「じゃあな」

オジーはピックアップを急発進させ、埃を巻き上げて帰っていった。

今日は少し時間も早いし、ちょっと寄ってみるか。

家を通り過ぎて、アレックスの家のほうへ向かってみる。

ガレージが開いて、電気がついている。

車を降りると、ギターの音が聞こえる。

音は重いのに、綺麗なアルペジオ。

「あ、コーディだ。久しぶり」

ソファに座ったアレックスが手を止めずに顔をあげる。

「今日ひとりか?」

「うん。さっきまで海で一緒だったんだけどね」

俺もベースを持って、少し離れたカウチに座る。

「最近コーディ来ないね、ってちょうど話してたんだよ。忙しそうだね」

アレックスは手を止めて立ち上がり、冷蔵庫から水を2本取り出し、1本を俺に投げる。

「サンキュ」

「……コーディ、今日なんか元気ないね。忙し過ぎて疲れた?」

「俺そんな元気キャラじゃねーよ」

水を開けて一口飲む。

アレックスはまたソファに座ってギターを抱え、いつものように音を探し始める。

「仕事楽しい?いや、違う。BMX楽しい?」

「……楽しい」

さっきも考えてたけど、走るのも、飛ぶのも楽しい。

「でも最近何か……物足りないのかな……」

「おー、こんなコーディ珍しいな」

アレックスが手を止めてこっちを見る。

その顔は、なんでか笑ってる。

「わたしはコーディがちょっとうらやましいと思ってるよ。

仕事にできるほど打ち込めるものがあるっていいよね」

また指を動かし、音を鳴らし始める。

「物足りないって?ほかにやりたいことできたの?」

「……そうじゃない」

「今までずっとBMXばかりやって来ただろ。……これからもきっと続ける。

……他にあってもよくね?」

「いいよ。やりたいことがたくさんあったほうがおもしろいよね」

そうだよな。

俺はベースを元の位置に戻して、煙草を取り出した。

それを見たアレックスもギターを横に置いて、煙草を取り出した。

「なんか、コーディが悩んでる」

アレックスは俺の顔をじっと見る。

「まだ人生に悩む年じゃないよ。やりたいことをやりなさい……って叔母さんが言ってた」

「……お前、何か悩みあんの?」

「ない。悩みがないのが悩み」

俺はフッと笑って見せる。

そうだよ、俺らしくねーな。

別にBMXで頂上目指したいわけじゃないんだ。

やれればいい。

BMXも、他のことも、諦めずにやりたいことを全部やればいい。

「大会終わったら、久しぶりにどこか行くか」

煙草を持ったまま立ち上がって、大きく伸びをする。

アンプの焼けた匂いを吸い込む。

「も一回スカイダイビングやりたいね」

「そんな金もう残ってねーだろ」

「……じゃ、コーディは何したい」

4人で何かやれれば何でもいいんだけどな。

海は行こうと思えばいつでも行けるし……。

「まだロードトリップ行ってねーな……」

「それさ、この前3人で話してたんだけど、冬にしない?」

「なんで?」

「スノボ、行きたくない?」

アレックスが笑顔を向ける。

雪山か、悪くない。

「初日は海な。サーフィンやって、それから山に向かってスノボ。いいじゃん」

「うわー!何それ、サイコーじゃん」

アレックスが小さく何度も飛び跳ねる。

そんな話をしてるだけで、さっきまでのモヤモヤした感じがバカみたいに思えてきた。

俺がやりたいのはこれだ。

みんなで面白いことやれればサイコーなんだ。

Today’s Music

Hero of the Day - Metallica

Story Date

August 1997

Location

San Diego

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