016

Co.
スカイダイビングって、こんなに無計画で行くものか?
でもま、それも面白い。
まずはアレックスの希望でドーナツショップ。
袋いっぱいのドーナツを買い込む。
「ここにテーブルほしいね」
セパレートシートは、女と乗るには距離が遠いけど、4人で乗るにはかなり便利。
前と後ろを行き来できるところとか。
ただ、食べ物を一緒に食べるときなんかは、置く場所がない。
「せっかく前と後ろに行き来できるんだから、テーブル置いたら邪魔でしょ」
イーライの意見も一理ある。
「今度作るか。どうにかして収納式にできねーかな」
「おー、さすがコーディ」
アレックスがそう言いながら、ドーナツを食べて、コーヒーを飲む。
これからスカイダイビングだっていうのに……。
「ねぇアレックス、これから空から飛ぶんだよね?」
セスも同じこと思ってるな。
「そうだね」
アレックスの口はもぐもぐしてる。
「……なんでそんなに食べれるの?」
「え?なんで?食べたいから。セスも食べな」
「いや、いいよ」
「食べないってことは、もう決まった?」
イーライがバックミラーごしにセスに聞く。
「決まってないよ」
「……ヘタレだな」
「コーディ、ヘタレとか言っちゃだめだよ。セスはやればできる子なんだから」
「ねっ」
……アレックスってたまにほんと、怖い。
これ天然なのか?
「みんな食べないの?早く食べないと飛ぶまでに消化しないよ」
「あ、そういうことか!早く言えよ」
俺もイーライも、セスも、すぐにドーナツの袋に手を伸ばした。
「ドーナツって、あんまり消化良くないよね……」
1つ目を食べ終わる頃になって、イーライがボソっとつぶやいた。
聞こえていないのか、セスが2つ目のドーナツに手を伸ばす。
俺とイーライは、顔を見合わせて笑い出す。
セスは何も気づかず、ドーナツを片手にカーオーディオにCDを入れる。
ジャーニーの『Escape』。
スピーカーから『Don’t Stop Believin’』のイントロが流れてくる。
ボリュームを上げて、俺が歌い出すと、アレックスも一緒に歌い出す。
セスも、イーライもすぐに歌い出す。
ステージより、ガレージよりも、車の中で4人で歌うのが一番気持ち良かったりする。
途中あちこち寄り道して時間を潰す。
いい階段や、手すり、車の通りがないなだらかな下り坂。
4人でスケートデッキ出して、飛んだり、滑ったり、転んだり。
イーライは写真撮ったり、三脚立ててビデオカメラ回したり。
到着する前に疲れそうだ。
遊びすぎて、けっこうギリギリの時間に到着した。
セスはまだウジウジしてんのか、途中から静かだった。
「よし、行くぞ」
セスの腕を組んでアレックスが歩く。
「見て見て!パラシュート!」
アレックスが空を指さす。
空から何枚ものパラシュートが降りてくる。
「僕、無理」
セスの足が止まった。
「……わかった。じゃ、ここで待ってな」
アレックスはセスの腕を解放し、俺とイーライの腕を取って歩きはじめる。
俺は振り返って、立ち止まってるセスに「ヘタレ」と声を出さずに伝える。
3人で受付を済ませて金を払って、順番が来るまで待機。
先に飛んでるやつを見たり、着地を見たり、パラシュートを畳むところを見たり。
緊張はするけど、待ち時間もけっこう楽しめた。
まだ、今から飛ぶ、っていう実感がない。
飛び終わった客の反応はバラバラ。
笑い転げてるやつとか、立てなくなってるやつ、「もう一回」とか言うやつもいる。
飛んでみなきゃわかんないってことだ。
飛ばなきゃわかんねーのにな。
そう思いながら、少し離れたところに座るセスを見た。