012

Al.
12月の後半からスコットランドに帰省して、サンディエゴに戻って来た。
暖かくて、眩しくて……呼吸ができる。
スコットランドは嫌いじゃない。
でも母と一緒だと息が詰まる。
今回もまた舞台の話。
やりたいことがないのなら、ロンドンの演劇学校に通えとか、オーディションを受けてみろとか。
もううんざりする。
ここが、私のやりたいこと。
早朝から、フルウェットスーツを着てサーフィン。
1月でもサーファーは多い。
水は冷たいけど、スコットランドの冷たさよりマシに感じる。
海から上がって、辺りを見回すけどコーディもセスもイーライもいない。
まぁそうよね。
こんなに早く帰ってくる予定じゃなかったし。
シャワーを浴びて着替えて、バイト先のカフェで時間を潰すことにする。
外のテラス席でコーヒーを飲んでいると、若い男性が私の向かいの席に座った。
私のこと知ってるみたいだけど、常連さんだっけ?
他に席空いてるけど。
「君、アレクシスだろ?俺ジャクソン。コミカレで一緒」
……そうだっけ?
「そう」
笑顔だけ返しておく。
ジャクソンは、何でもできそうなスポーツマンタイプに見える。
あ、でもコーディとは違う。正統派。
「……何か用?」
「あぁ……一緒にコーヒーでもどうかなって」
そう言って爽やかな笑顔を見せてくる。
「……もう飲んでる」
そう言って笑顔でマグカップを見せる。
「じゃ……ここで一緒に飲んでもいい……?」
好きにすれば、と顔だけで返事する。
ジャクソンは席を立って店内に入って行くと、コーヒーを持ってまた戻って来た。
やっぱりここに座るんだ。
「今日は何するの?」
「友達のところに行く」
「明日は?」
「バイト」
「終わったら?」
「友達のところ」
端的に、でもちゃんと笑顔で答えてあげる。
「……そうか」
ジャクソンも笑顔で大きくゆっくりうなずく。
「じゃ、学校始まったら……その、一緒にランチとかどう?」
「……まぁ、時間あれば」
ジャクソンの緊張した笑顔がほころんでいく
「よかった……。いつも何やってるの?」
「……いろいろ。音楽とか、海とか」
「わかるよ……髪、濡れてる」
あ、そうだ。
髪濡れたままだ。
「そうだね、じゃ、またねジャクソン」
立ち上がって、残っていたコーヒーを飲み干す。
別れ際のジャクソンは、変な顔をしていた。